【筆跡鑑定の基本的手法について】

基本となるベース資料筆跡と、鑑定しようとする目的の筆跡らの二つを照合比較し、それぞれの特徴を次の如く分類して鑑別する。

  1. 運筆について
    1. 筆圧・筆速度・逆筆有無(逆鏨)・とんざ(勢いが急にくじけ弱る事)。
      筆勢・尻上がり癖・文字間隔のつき離れ・文字全体のうつむきと見上げ等による筆跡の様子。
    2. リズム・生き生きとした動き・筆圧・筆勢の様子。
    3. 描かれた文章及び文字のすじみちが一貫しているかどうか。
    4. 偽造筆(留まり・ためらい・何ともいえないギスギス感)の有無。
  2. 達筆度合い(技量)について
    1. いかに書き慣れた続け字を書き、草書行書風になるか等をみる。
    2. 筆跡用具を使いこなして、筆を運ぶ技の上手下手をみる。
    3. 自己流に陥らず掟通りの文字(草書・行書・楷書)をどれだけ描いているか。
      〔書法規範を守っていればいるほど上位とみる〕
  3. 描かれた文字の形態と字画について
    1. 間違って記憶された文字(画数の増減)・誤字脱字等。
    2. その筆者独特の強い癖と、常識的な文字姿恰好。
    3. 構成線の震え具合・長さ・太い細い・直線か曲線か・尻上がり尻下がり等。
      中高か下低か(鳥居反り)・大小・ついているか離れているか(向背)等。
    4. 文字列ハーモニーで、丸っぽいとか四角っぽいとかを含んだ相対的大小比。
    5. 文字の持つ品性・表情・艶配などの比較。
  4. 文字画の構成状況と文字形態の特徴
    1. 垂直性・水平度・中心線・左右バランス・割り振り等。
    2. 交わり交差の位置・合わさり角度・文字の間隔・行の間隔・疎密度・高下等。
    3. 文字画の組立仕組みの様子。(結構)
  5. 文章の段と章の組立
    1. 文字配列等のレイアウトの状況。
    2. 項目設定及び書式設定状況の差等。
    3. その他のレイアウト状況。(文字の大小・行頭・行間疎密・字の置き場所)

これらを照合比較し、鑑定人の現場体験をプラスして筆跡鑑定の同異を論ずることとする。